目次
はじめに
どうも、かとうです。
今回はグリスの話をまとめていこうと思います。グリスは主に防錆と潤滑を目的にバイクのメンテナンスに使用するものですが、いろいろな種類のグリスがありますよね。
今回はグリスの基本的な話から、実際にどのような種類があるかをご紹介します。
グリスの構成
基油と増ちょう剤と添加剤
グリスは基本的に以下の3要素から構成されます。
基油+増稠剤+添加剤
- 基油:ベースとなる潤滑させるための油。グリスが樹脂やゴムを侵すかどうかは一般的に、基油の性質で決まる。
- 増稠剤:ぞうちょうざい(増粘剤とも。)。基油の粘度をあげるためのもの。グリースの耐熱性や耐水性は増ちょう剤に何を使っているのかが支配的になることが多い。
- 添加剤:極圧性能をあげたりするために添加するもの。例えばモリブデングリスは二硫化モリブデンを添加剤として使用したものである。
基本的にグリースの潤滑するための基本性能は基油が担保しています。ただし、基油はあくまでも油で、サラサラしたものです。サラサラしていると、塗布した箇所から流れ出しやすく、長期間の使用で油切れが起きる可能性が高くなります。
チェーンのようにこまめに注油できる箇所の潤滑であれば、油でもいいのですが、ベアリングなどはめったに注油できるものではありません。そこで、長い期間部品にとどまるように粘度を上げるために増ちょう剤を加えて、一般に知られるペースト状のグリスとしたものを使用します。
基油と増ちょう剤のほかにも、一部のグリスにはプラスアルファの効果を狙って添加剤が加えられたグリスもあります。
バイクメンテナンスで使用するグリス
金属石けん系グリス(カルシウムグリス、リチウムグリス)
用途:一般的なグリスアップ
ホームセンターなどでも、リチウムグリス、カルシウムグリスといった名称のグリスをよく見かけると思います。これらのグリスの名称は、増ちょう剤に何をつかっているのかに着目した名称です。
「万能グリス」などの名称で販売されているグリスは、これらのグリスであることが一般的です。
汎用性の高い、ごくごく一般的なグリスで、安価に手に入ります。
カルシウム石けんを増ちょう剤に使用するとカルシウムグリス、リチウム石けんを増ちょう剤に使用するとリチウムグリスとなります。一般にカルシウムグリスよりもリチウムグリスのほうが耐熱性に優れています。
↓リチウムグリス
↓カルシウムグリス
非金属石けん系グリス(ウレアグリス)
用途:一般用途(リチウムグリスやカルシウムグリスに比較して耐水性・耐熱性が高い。)
こちらも増ちょう剤に何をつかっているのかに着目した名称です。非金属石けん系グリスの代表格はポリウレアを使用したウレアグリスです。
ウレアグリスは色が特徴的で、クリーム色の白っぽい色をしています。
耐水性や耐熱性がリチウムグリスなどに比べて高いという特徴がありますが、価格も高価になります。
シリコングリス
用途:ゴムやプラスチック部品の潤滑
シリコングリスというのもありますが、これは基油の種類に着目した名称ですね。
基油にシリコーンオイルを使用したグリスです。
グリスのうちゴムを侵すかどうかを決定するのは増ちょう剤ではなく「基油」ですが、シリコーンオイルはゴムやプラスチックを侵さないという特性があります。
一般的なグリスで使用されている基油の分子構造が炭素結合(C-C)で出来ているのに対してシリコーンオイルはシロキサン結合(Si-O)で構成されています。
シリコングリスはゴムやプラスチックを侵さないという特徴は、このようにそもそもの基油の分子の骨格構造がまるっきり違うというところからきています。
色は白です。
モリブデングリス
これは添加剤に着目した名称区分です。
あくまでも添加剤の名称なので、モリブデンを加えるもとのグリスになにを使っているのかは名称からは分かりません。安価なモリブデングリスであれば、ベースのグリスはリチウムグリスの安いグリスである可能性が高いですが、高価なモリブデングリスの場合ウレアグリスをベースとして使用していることがあります。
モリブデンを加えることで、極圧力性能が高くなり、より高荷重のかかる部位でも潤滑不足に陥ることを防ぐことができます。
加えられているのはモリブデンの単体ではなく、二硫化モリブデンです。
色は真っ黒なグリスとなります。
↓耐熱性・耐水性に優れるウレアグリスをベースにしたモリブデングリスは以下。やっぱり一般的なモリブデングリスよりは若干高価です。
カッパーグリス
用途:高耐熱箇所(エキゾーストパイプ周辺等)
こちらも添加剤に着目した名称です。
銅の粉末が添加されています。柔らかく、融点の高い金属粉を塗布することで、通常のグリスでは使用できない高温域に対して潤滑性能を狙ったものとなります。さらさらの粉末だと塗布できないので、グリスに溶かれていますが、基本的に油分ではなくて添加物の銅粉が主役となります。
焼き付き防止としてエキパイのボルトなどの高温になるところに塗布されます。
もっとも代表的なものにワコーズのスレッドコンパウンドがあります。スレッドコンパウンドは1085℃耐熱です。
↓また、ロックタイトからも同様のカッパーグリスが発売されています。
類似の製品として、より高耐熱を狙って銅粉末ではなく、融点の高いニッケルを使用したグリスも存在します。
↓ネバーシーズニッケル 1425℃まで使用OKとしていますね。
スレッドコンパウンドはコンパウンドなの?
ちょっとした雑談的お話です。
日本語でコンパウンドというと「ペースト状の研磨剤」のことを指しますよね。
一方でスレッドコンパウンドは「研磨剤」ではありませんので、コンパウンドではないじゃん!と感じられるかもしれません。
英語の意味としてはcompoundは化合物、threadはねじ山の意味ですので、直訳するとねじ山用化合物、ちょっと意訳するとねじ山用潤滑剤程度の意味です。
ワコーズの「スレッドコンパウンド」というネーミングは英語の原義に近い用法なんですね。
ちなみに日本語で「コンパウンド」と呼んでいるペースト状の研磨剤は英語圏では何と呼ばれているかというと、abrasive compoundです。abrasiveが研磨という意味ですので、直訳すると「研磨用化合物」ですね。
abrasive compoundという言葉が日本に入ってきたときに後半の「コンパウンド」だけが残ったようですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
バイクメンテナンスに使用するグリスはいろいろ種類があって、どう使い分けたらいいか迷いますよね。
とりあえず汎用のグリスとしてリチウムグリスかウレアグリス、そのほかの樹脂・ゴム部ようにシリコングリスをそろえて、あとから必要に応じて買い足していくというので良いと思います。
いろいろメンテナンス用のケミカルをそろえていくというのも楽しいので、是非調べてみてください。