目次
はじめに
レースにでるときに必要となる、レギュレーションで定められている装備のひとつにスプロケットガードというものがあります。
鈴鹿サーキットなどにJSB1000や鈴鹿8耐に出場しているマシンにもスプロケットガードは必ず取り付けられており、スイングアームの下部についているのを見ることができます。
アマチュア向けの草レースであっても、ちゃんとしたレースであれば大抵レギュレーションで装着が義務づけられているかと思います。
今回はそうしたスプロケットガードについて解説をしていこうと思います。
スプロケットガードはなんのためにあるのか?
転んだときに手指や足先などがスプロケットとチェーンの間に挟まれることを防ぐために付けます。
例えば、中速コーナーで、100km/hで走行中に転倒した時を考えてみましょう。
17インチのスポーツタイヤの外形は約630mmなので、円周は大体2mです。従って100km/h(≒27.8m/s)で走行中、リアタイヤは毎秒約14回転しています。
転んだ瞬間はリアタイヤはその回転数を保っており、ホイールとタイヤの慣性力で回り続けようとしているので相当なエネルギーを持っています。
その状態で、下図のようにチェーンとスプロケットの間に手指や足先が巻き込まれると、いとも簡単に切断されてしまいます。
スプロケットガードはスイングアームの下側に取り付け、スプロケットとチェーンの間に指や足先が入ることを防ぐ部品です。
市販スプロケットガードの紹介
スプロケットガードは自作することも可能ですが、薄いエッジのあるような板金での制作は認められていません。レギュレーションで肉厚や形状に対して指定されていることが多く、市販のスプロケットガードを購入するほうが手軽で安心です。
GBレーシング
GBレーシングはバイクのガードパーツを主力とするイギリスのメーカーです。8耐マシンなどでもエンジン二次カバーにGBレーシングのものを使用しているのをよく見かけます。
実績と性能から言っても文句のない製品を販売しているメーカーといえます。
こちらのGBレーシングのスプロケットガードはM6x20の取り付けボルトがついていますので、スイングアーム側にM6のタップないしナットリベッターが必要になります。
価格は8,800円(2022年11月6日現在)です。見た目もかっこよく、ステーの作りこみもしっかりしているので、若干高めの価格設定になっています。
Rise 綾織りカーボン製チェーン&スプロケットガード
もうちょっとリーズナブルな価格帯ではこちらのものがあります。
綾織カーボン柄で、こちらはこちらでレーシーなカッコよさがあります。
価格は5,980円(2022年11月6日現在)です。
スイングアームへの取り付け方
スイングアームに取り付けるためには、タイラップでとめる等の方法ではなく、しっかりとねじ止めする必要があります。ここではねじを取り付けるためのスイングアーム加工の方法をご紹介します。
ちなみに、スイングアームの下側に加工することになるので下側からの施工で難易度が高い&スイングアームを破壊したら交換が困難というハイリスク案件ですので、タップやナットリベッターの使用に不安があるひとはプロに頼むか、別の素材で練習してからスイングアームの加工に挑戦しましょう。
タップを開ける方法
タップ&ダイスセットを使用して、スイングアームにメネジを切る方法です。
メネジを開けるのがタップ、おねじを切るのがダイスですので、今回使用するのはタップのほうになります。
タップは、なめかけたメネジを復活させたり、ねじ穴を掃除したりするのにも使えるので、1セット持っておくと便利です。
この方法での懸念点は、スイングアームの肉厚が薄い場合、ねじのかかり代が小さくなってしまうということです。M6ボルトを固定に使用する場合ですと、M6のピッチ(一回転で軸方向に進む長さ)は1mmなので、スイングアームの肉厚が2~3mmのアルミだとしたら、2~3ピッチ分(2~3回転)しか、ねじのかかり代が確保できないことになります。
バイクの部品は常に振動にさらされるところですのでねじのかかりは最低3ピッチ分は確保したいところですので、可能であれば、単にタップを開けるのではなく、下で記載しているナットリベッターの使用をおすすめします。
ちなみにM6の下穴はΦ5です。
ナットリベッターを使用する方法
スプロケットガード固定ねじのかかり代をしっかりと確保しようとすると、ナットリベッターの使用がおすすめです。ナットリベッターはカウルを止めているウェルナットと同じような仕組みで薄板にナットを取り付けるための部品です。
手軽に使えるナットリベッターとしては、エビのちょっとナッターがおすすめです。
タップを切るにしても、ナットリベッターを使用するにしても、スイングアームの穴あけを慎重に行いましょう。
最初にオートポンチなどを使用して位置決めをしたら、位置を確かめながら細いドリル径から段階を踏んで太いドリル径にかえて穴をあけていきます。
また、タップやナットリベッターを使用してスプロケットガードをスイングアームに取り付けたあとは、ねじゆるみ防止剤のロックタイトも使用しておいたほうが安心です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
スプロケットガードは、レースに出ないという人でも、転倒時にスプロケットに巻き込まれるのを防止することができますし、より安全性を高める装備だと言えます。
また、スプロケットガードを付けているだけでレーシーな見た目になりますので、とてもかっこいいです。
みなさんも一度スプロケットガードの使用を検討してみてはいかがでしょうか。